二胡の消音器♪おすすめと使い方

二胡のお道具

楽器と騒音

楽器をやる以上、一生ついてまわるのが音の問題です。=騒音問題ですから少し根が深いですね。周囲の家に聞こえているであろう楽器の音は、それがプロであっても快く思われません。病気の方がいらっしゃるかもしれませんし、休憩中の方もいれば、静かな環境を好む方もらっしゃいます。楽器を演奏している自分に事情があるように、周りの方にも事情があるのですよね。

二胡に限らずですけれど「私の家では音は出せない」という理由で、楽器を諦める方は少なくないと思います。都会であれば集合住宅の方がほとんどでしょう。田舎であれば普段が静かすぎて少しの音でもうるさく思われます。ご近所付き合いもありますから気を遣いますね。

私は雷に憧れています。理由は、”防音せずに思いっきり爆音を轟かせている”、から。変な話ですが、心の底から羨ましいと思うのです。そのくらい楽器演奏と騒音問題は背中合わせ。生涯防音。あなただけではありません。

二胡用の消音器

そういう方のために消音器があります。

バイオリンやチェロなど西洋の弦楽器にとって、消音器は一般的で広く普及しています。しかし二胡の消音器が市場に出たのは少し遅かったように思います。東京でしたので音の問題は皆が抱えていて、木製のものを試してみたり、どれがいいか感想を共有していました。当時の二胡仲間が、オレンジ色のホームセンターで売っているような強力な金属クリップを「消音器代わりになる!」と見つけてきてくれて、みんなで大喜びしたのを思い出します。

二胡の消音器・台湾唐克楽器「黒蝴蝶」
二胡の消音器・台湾唐克楽器「黒蝴蝶」

現在一般に普及している二胡の消音器です。これは台湾唐克楽器の「黒蝴蝶」という名の商品。ある時これが出回りました。小型で軽量、楽器ケースに入れやすく、簡単に扱えて、駒への負担も少なく、しっかりとした消音効果を得られます。「待ってました!」「やった!」と皆が飛びつきました。
これは当時のものですから15年近く経っていると思いますが、今も問題なく使えています。
私は弾き比べたことはありませんが、この形の消音器では台湾唐克楽器の製品がもっともおすすめされているようです。

今では各社が製造しているようで「二胡」「消音器」で検索すると、この形のものがいくつか出てくると思います。ちなみに台湾唐克楽器のこの消音器は特許商品で、模造の粗悪品が出回っているということで、なんと蝉の形!にリニューアルして販売されています。遊び心があって素敵ですね。

こちらで蝉の消音器が販売されていましたので、リンクいたしますね。音量は10分の1と紹介されています。https://jiangnan.ocnk.net/product/1249

木製のものも、他の会社のものも、それぞれで音へのこだわりがあると思いますから、使っている方がいたら聞いてみるといいかもしれません。

消音器の使い方/音が小さくなる理由

二胡の消音器の付け方

発生した振動(音)を、効果的に蛇皮に伝える役目をするのが「駒」です。英語で駒を”bridge”(ブリッジ)と言うのはそのためです。橋を壊せば向こう岸に渡れなくなるように、「駒」の機能を抑え込めば、音はせき止められて小さくなるだろうというのが、消音器のやっていることです。

二胡の消音器の使い方

消音器の脚で「駒」を挟むことで、音の伝導効率がダウンし、結果として音量が下がります。このタイプは駒の穴部分から上をつまむような作りです。
小さいですが重要な役割を担っているのが「駒」です。駒の材質や作りによって音質はかなり変わりますので、質の良いものを選ぶことをおすすめします。

二胡の消音器の使い方/駒に装着

弦の振動に影響がないように、二本の弦に触れないような作りになっています。

消音器をつけた音は?

音程は気になるほど変わりません。

音量はぐっと下がります。

音質は落ちます。
無味乾燥とした、少し硬めの、簡素な音が鳴ります。振動のふくよかさや、まろやかさ、ニュアンスは消えますので、衣を剥ぎ取られて残った音という感じでしょうか。その分、音がソリッドで掴みやすいので弾きやすいと感じる人もいるようです。私自身もそう思います。

音質が落ちるのは駒をつまんだことの代償ですが、消音しながら出てくる音としては立派と思うほどの音です。よくぞここまで音質をキープしてくださいましたと私は感じます。そこは割り切りましょう。音量はかなり小さくなりますから。

環境によりますけれど、部屋の窓やドアをきちんと閉めていれば、ご近所を気にするほどの音量はでないであろうと思います。賃貸マンションの部屋で夜に練習できるくらいにはなると思います。

消音器での練習は技術メインで

二胡の消音器の使い方/ 駒につける

消音器をつけた状態だと、楽器からの響きを体感することが難しいため、技術メインの練習時間とするのもいいかと思います。
「変な音だな」「本当はどうやって響いているのだろう」「楽器全体を鳴らしたいな」という気持ちは、まず脇に置く。必要不可欠で使っているのですから、考えても無意味ですね。弾けることの恩恵に気持ちを持っていきましょう。

技術ですが、まずテンポ・リズムはとれているか。譜読みできているか、フィンガリングは適切か、指は効率よく(無駄なく)動いているか、右手と左手のタイミングは合っているか、ポジション移動はスムーズか、ポルタメントの塩梅はどうか、ボーイングに呼吸を合わせられているか、などなど、やれることは山のようにあります。更に、深い呼吸と脱力はいかなる時も、です。

消音器+@で更に音を下げる方法

・防音マット
・防音カーテン
・防音ボード

「楽器」「防音」で検索すると出てきます。カーテンやマットは簡単に取り入れられますから、考えてみてもいいかもしれませんね。

消音器の注意点

二胡の消音器、駒につけた消音器

駒を傷つけないこと

駒は重要な役割をしていると記しましたが、大前提として、消音器で駒を傷つけてはいけません。
あまりにバネが強力すぎると、駒が削れるかもしれませんから注意が必要です。ホームセンターで売られている強力なクリップの話をしましたが、それは普及品がなかった頃の話ですね。市販されている二胡用の消音器を使うことをおすすめします。
特に、駒作家の製品は、良い音を得るための重要なパーツとして手に入れてらっしゃると思いますから、消音器で傷つかないように扱いましょう。

消極的な演奏にならないように

消音器に賛成されない指導者もいらっしゃるかもしれません。小さな音につられて身体の動きが小さくなったり、大きな音が出ないよう気にするあまり消極的な表現になったり。楽器本来の音で弾くのと感覚は異なりますから、それらが癖になるのを気にされるのかもしれません。
しかし、時間を気にせず、自由に、弾けるメリットを取りましょう。消音器の方が思い切り弾ける!と思って、のびのび楽器に向かって下さい。そのための消音器です。

おまけ知識:消音器と弱音器は違います

消音器と弱音器。
この2つは、音楽用語としては異なるものを指します。

・消音器は音を小さくするもの。防音のためのグッズですね。「消」という字が入っていますけれど音は完全には消えません。

・弱音器は音を弱くするもの。作曲家の指示が入っている特定の音楽表現のために、あえて楽器の音を弱く表現する時に使います。オーケストラで利用することが多いと思います。バイオリンなどの弦楽器の他に管楽器でも着用します。

二胡には(こういった用途の)弱音器はないのでは?と思います。音楽表現として、小道具で弱めた二胡の音を作曲家が欲しいかどうかによりますでしょうか。そのうち新しい試みが出てくるかもしれませんね。

カラオケボックスで二胡練習

カラオケボックスは、今や楽器の練習部屋。さまざまな楽器奏者が利用していますよね。昼間は安い時間帯がありますし、飲食もできますから快適です。

アンサンブルの合わせにも、カラオケボックスは重宝します。広めの部屋なら一度に数名が演奏できます。私も本番前のリハで、会場近くのカラオケボックスをギタリストと一緒によく利用していました。
公共施設の貸し音楽室を使うという手もあります。

消音器を外して、ストレスなく響かせたい時に利用してみてくださいね。


皆さんの二胡ライフがもっと楽しくなりますように♪